やさしい手・壱岐(011:食術)
美味しくても、マズくても、女性はもちろんのこと男性も、人に食べさせられる得意料理の一つや二つは持っていた方が良い
食の重要性(生命維持の原点は食)からして、また、趣味の一つとして、若くして得た技術は、老後に役立つ
生きる源は「食に有り」
そしてその”認識”にこそ己の老後を良いものにするってね
脊椎骨折で充分な養生をせず病院から逃亡の父は、生涯治ることのない腰痛持ちとなった
激痛ではなく「痛だるい」と本人は言うが、何かに没頭していないときは立って腰を前後に揺する動きをする
痛み止めの薬を朝昼晩に服用しているが、効いている風もないが止める度胸も私にはない
今日も、昼食の後、1時間もしない内に台所で調理の用意をし始めた
昼食を食べたか食べてないかは関係ない
「食事を息子に振る舞わねば」と居候(と思っている)の息子を思う気持ちだけで台所に立つのだ
調理していることで腰の痛みは和らぐというか痛み気がそれるのだろう
●調理だけではない、掃除機をかけたばかりのローカにモップ掛け
念入りな掃除なので、それはそれで結構
でも、新しく購入したサイクロンの掃除機は使えない
履いた後のモップについたゴミは、そのまま倉庫にお引っ越し
●おやつ直後、早々とお風呂の準備
早く疲れがとれて良いだろうが、湯量半分に満たないのに入浴開始
さぞ一番風呂は気持ち良いだろう
最後に洗って出るのは私である
●何かする事ないかと探すように寝室・居間を行ったり来たり
常に動いて無いと落ち着かない
考えてみれば貧乏揺すりと変わりない
それでも何もすることがなければ、ベットの柵につかまり腰を前後・左右に揺する
「ねえねえ、どうしておかずとご飯、味噌汁を順繰りに食べないんですか?」
勤める小規模多機能型居宅介護ホームで、
一品ずつ平らげた後に次の器に箸を移すご利用者に問いかけた
「そうやな、どうしてやろう」と言う方はまだ可愛い
「ほっといてーな、どう食べようと勝手やろ?!」っと大概のご利用者は言う
作る側は、ご飯に水分を加味し軟らかくする味噌汁と、
塩気でご飯が喉をとおるおかずの3品の提供に心がける
決定的なのはデザート
大概の方は、見たとたんデザート先行だ
やっぱり、皆、甘いのが好きなのだ
若い頃から甘い物好きの父も、糖尿病と言わないまでも高脂血症と高血糖値症状をもつ
「もう先は長くないんだから好きなように食べさせて!」って言う気持ちも分かる
が、一言余計にいってあげる
「これ先に食べたら間違いなく死ぬよ!?」(ん? どっかで聞いたことある台詞)
料理の一品でも会得した人は、栄養バランスや必須栄養素を勉強した人
「真心のこもった料理」っていうのは彩りや盛りつけの見た目や味だけではない
味の善し悪しは間違いなく人それぞれだし、色や形も好き嫌いは人それぞれなんです
なので「その人の好みを知っているのでその人の好みに会わせることこそ真心こもった」と
言うんだと思う
生きる源が「食に有り」だとすると「真心が生を支える」といっても過言では無い
一仕事を終え、帰りに”一杯”ってサラリーマンの特権です
特に、商談成立、難解トラブルの原因判明とか上司から褒められたりすると、
怪訝そうな同僚か部下を敢えて誘って喉を潤すというのは”達成感”を自分一人だけじゃなく
誰かとその成果・評価を共有したい気持ちの表れなのだろう
誰も居ないときは、黙って家に帰って一人、にやにやしながら、その過程を振り返りながら缶ビールを傾けたりする
こんな事が続くと、アル中症候群ってやつだろう、悲しいとき、辛いとき、困ったときにもお酒がほしくなる
悲しいときは悲しみを忘れるために、辛いときはその辛さをこくふくするために、
困ったときには何か良いアイデアが生まれるんじゃないかとアルコールの力を借りるのである
しかし、そんな時決まって、飲み終えたあとの心の状態はなーんにも変わっていない
むしろ、眠たくなるだけだ(笑
寝れば明日、また太陽を浴びられる
ビタミンDって、人間の骨格をなす骨の維持・成長に重要な栄養素
僅かながら食べ物から得られるが、殆どは、なんと「お陽さん」から得てるんです
昔からよく言う「部屋にこもってばかりの子は育たない」とか「陽に当たらないもやしっ子」って
ここから来るんです
なので、健康に過ごすには食べてりゃそれで良いわけでなく、外の陽の下、体を動かし筋肉や骨を維持することが
重要なんですネ
92歳の親父は、テーブルの上に準備された夕食のおかずを観てから
お猪口一杯の日本酒を飲むかどうかを決めているようだ
ちょっと前まではお猪口一杯だったが最近はコップ一杯の”冷酒”に昇格している
自分で夕食を作るときは、日本酒が飲みたい時
そして日本酒に合う(塩気のある)おかずを作る
決まって、飲むときはご飯(米飯)は、お茶碗に半分なのである
そばでそーっと見ていると、やっぱりサラダオイルを鍋に注いでいる
昨日買ってきた衣付きエビの天ぷらが冷凍庫に入っているのを知っているのだ
昨日「これ美味しいね」と褒めたのが記憶に残っているのか
今日も得意とする天ぷらを作るつもりだ
今作るのは人に提供する”得意料理”でしかない
1品の料理を会得した人間が”生きる術”を探ってる