Release: 2020/07/19 Update: 2020/07/19

やさしい手・壱岐(005:関係)

今日の新聞に「ようこそ ユニマチュードの 世界へ」と題した連載記事(10回)が載っていた

毎朝5時には起きて、ブラックコ-ヒー片手に縁台でタバコを吸いながら新聞を読むという日課の

小生の目に、過去9回を一度も目にしていないということは如何な物か

それはともかく今回が最終回と言うので、丁寧に読んだ

「あなたのことが大切・humanitude」とある

考案者はイブ・イブジネストというフランスの方で

哲学と、知覚・感情・言語に基づく包括的コミュニケーションを軸としたケア技術「ユマニチュード」を

8年前に考案され、現在は京都大学こころの未来研究センター特任教授でいらっしゃるとのこと

”ユニマチュード”は、5年前に小生が初めて介護の世界に入って友人に紹介された介護技術

どの資料をみてもカタカナでしか書いてなく、内容も抽象的な技法ばかりなため頭に残っていなかったのだが

”humanitude”と見れば、あーなるほどネって覚えやすいし中身も想像できる

最初から”ヒューマニチュード”って言えよって思った瞬間が恥ずかしい

先日、勤める小規模多機能型居宅介護施設で実施の研修のテーマがユマニチュードであったのも影響して

新聞記事が目にとまったのだろう

「あなたのことを大切に思っている」と伝え、良い関係を築くこととあり

更に「人のケアから関係性のケアへ」と続く

 

『おはようございます!』

大きな声で初対面のご老人に挨拶をする

が、返ってきたのは下から頭までゆっくりなめ回すように動かす不機嫌そうな顔でしかなかった

そして脇に控えていたスタッフにゆっくりとした口調で言う

「この人、何考えてんかネ?!」

え? 何が悪かったの?

・大方のご老人は耳が遠いので大きな声で

・少し屈んで正面から目線を合わせ好意的に

・にやけてるけどにっこりと笑み含みで

の挨拶だったのに・・・・・

この方、肺がんで余命3ヶ月と宣告されて小規模多機能型居宅介護施設に入所されて半年になる88歳の女性

この時に心を許されて介助が出来るスタッフは、施設長、ケアマネとこの時側に居たスタッフの3人でしかない

後で分かった事は「もういつ死んでも可笑しくない事情(末期癌)を知っている人に介助して欲しかったんだ」と

もちろんこの方もアルツハイマー型認知症になられている

小生がこの方の介助が出来る4人目の人になったのは3ヶ月後である

ご本人から「実はな、癌で、もう何日も生けてられへんねん」と夜勤で痛み止めの薬を塗布して、背中を擦ってあげている時だった

「あんた、私のこと知らんかったやろ?」

「でもな、他の人のオシメ変えたり、ご飯作ったり忙しい時、こうやってやさしぅ撫でてくれるから言うわ」

「ごめんな我が儘で」「もう少しだけ楽させてーな」とSPO2が75%にも拘わらず信頼して頼ってもらえたのが

その後、実に1年も続いたんです

最期も小生が夜勤の日でした

脱脂綿に含んだ水も飲めない、僅かに開いた唇が「ありがとう あんたでよかった」と言ってくれたんです

 

ユニマチュードでは「見る、話す、触れる」技術をうたっています

なかでも「話す」は、相手に真に寄り添うと自然と言葉がでてきます

ですが、誰かと一緒に生活する中で前向きにポジティブな気持ちだけ抱いているということは不可能なことです

「この人、何考えてんかネ?!」と吐き出された言葉を耳にして、抱いた感情を変える必要はありません

ネガティブな感情が溢れてきそうなときは、少し時間をおいて、深呼吸をして

「さっ、今からユニマチュードをやるぞ!」と決めます

こに一瞬の間が最悪な状況から抜け出す第一歩となります

「赤間さんには今日初めてお会いするので勝手が分からないので、いろいろ教えて下さいね」と話すと

「いいから、あっち行って!」と反応があり、一歩前進です

実はこの方、自分の体の事情を知らない人には、安心して心を開いてくれない方だったんです

何日も何日もその方の体を観察し、何回も何回もベットに一緒に座って背中を擦ってあげることで、3ヶ月後にやっと心を開き4人目の仲間になれたんです

介護をしてると「寄り添う」と言う言葉をよく耳にします

相手の思いを分かち合うということです

その思いは、良いことだけではなく悪いことでもあったりします

福祉には大きく分けて、子育てと介護があります

子供には悪い行いは正しく導き直すのでしょうが、お年寄りに対してはその悪を「改めさせよう」なんて考えてはだめです

その悪を理解してあげることが必要なのです

 

今晩も、甘い物好きの親父に買って仏壇に供えたクッキーを、夕食後、茶碗を「う・ウ、ハー」と言いながら洗い終え

無言で仏壇の前に座って頬ばってます

身体介護に薄いので助かってるが、恍惚の人として映る心淋しい瞬間がやるせないのは今も変わらない

寄り添われる嬉しさは感じているのでしょう

認知機能が薄らぐその間際までに、家族や社会と良い関係性をしっかり築いていたいと思うのです

 

注)赤間さん:仮名です

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