やさしい手・壱岐(010:マイホーム)
「家を建てるなら・・・」、何年か前にきいたようなCM台詞
いつものようにデイサービスを終え、送迎でお家にお送りする
玄関前に送迎車は止められない
おまけにご自宅の車庫に車を入れるには車庫の狭さはともかく
車庫前の車の往来が激しすぎて、心臓に毛が生えていないと無理
しかたなく側の民家駐車スペースに車を(無許可で)停めさせて頂き
玄関まで、片腕支えで3分掛かって玄関にたどり着く
「この段差、家を建てるときもうちょっと考えるんだった」と
今に始まった事じゃ無い、送迎の度に毎回そんな会話をしている
「確かに! 家を建てるとき、年取ったときのこと考えるの大事ですね」と軽くいなす
3cmの段差に転倒するお年寄り、まして25cmの上がり框が難なく上がれるわけが無い
両脇もろ支え状態で2段の階段を誘導しやっと玄関ドア
玄関の鍵は施設預かりなので、おもむろに鍵をポケットからだし、鍵穴に差し込む
玄関ドアは仕様の統一化により、開け閉めに左・右の回し方が不統一
いろいろなお家に伺うと、「これ開けるの左回し?、右回し?」って迷う
覚えればなーんてことないけど、それまで無駄な作業で時間を食ってしまう
解錠の時、もちろんそのご老人の支えは無く、不安定な状態で体を見放すことになる
「開きましたよ!」、「ありがとう、鍵、あってよかった、階段しんどかったけど・・」
4、5年前にお家の玄関から降りようとして階段を滑落
頭蓋骨陥没で無くなった方がいらした
丘陵地に建つ団地(といっても集合住宅では無く一軒家の集まる新興住宅街)でのこと
その丘陵団地、約100世帯が、水平な生活道路の上下に敷地設計されている
道路の下側は玄関と道路が同じ高さなのだが、上側は、言わずと知れた砲台設計
10段程度の階段を上がって家に入ることになる
大概は住宅斜面は南向きに造成される
なので、道路上側の家は日当たり、見晴らしが良いわけだが
さっ! 年を取って家の出入りするには一苦労するのである
一旦その階段でつまずきとまでいかなくても膝折れしたら、命は無い
住宅ローンではあるが、イザ、マイホーム!
そう、誰もが夢見る光景である
若ければ若いほど「やっぱ日当たり第一だよ」とか「子供の学校近いし、買い物もスーパーが近いので良いね」って
その時の夢を語る
その一歩先の事を考えて欲しい
施設にお世話になるまでもなく、年老いて住みやすいか暮らしやすいか
建て売りなら、今がどう便利かだけでなく無く、
近い将来に老いぼれた老体が難なく暮らせるかどうかを判断材料として決めるべき
注文建築なら、家にはいるのに段差無く、トイレは車椅子が入れる位の広さで、
バリアフリーで無くても良いけど手摺をつけて歩けるくらいの幅ももたせた廊下・・・・
きりがないかも知れないが頭はしっかりしてるけど「脳梗塞になった時の自分」を考えて家を建てて欲しい
世の親御さん「子供のため」と家を建てる
と思いきや、親を見る子供が苦労する家になったとしたら余計な気苦労でしかない (-_-;)