Release: 2021/07/13 Update: 2021/07/13

磯エビかあさん

川エビは、広い海原に出たいと思っていた

眩しい太陽のもと、思いっきり恋をしたいと

ある日、幼なじみの磯エビに、真顔で聞いた

 「一緒に海で暮らさないか?」

 「えっ? それってプロポ・・・」

 「いやいやソーじゃなくて

    青い海はどーかなーって思って」

 「 死んだ母さんが言ってたワ

    『海はひろいけど深い』って」

 「母さん達、昔、海に住んでたんだって

    父さんに誘われて河口からどんどんどんどん

    上流に遡って来たけど

    しょっぱい水からおいしい水になれるのに

    そう時間はかからなかった

    でも真水に慣れてる私たちが

    塩水の中に行くのは死ににいくのと同じだって

    言ってたワ 母さん

    それに ほら、あそこ!

    ひまわりがみえるでしょ

    晴れた空にはひまわりがよく似合うワ

    碧い空も清んできれい 海の青さにまけない」

 

いつかそんな話をしたね、磯エビ母さん!

もう腰も曲がったから、思うように向日葵をみあげることもできないけど

いつまでも向日葵はそこに咲いている、川でよかった

眩しいばかりの海は鏡

眩いばかりの太陽を映すのは上辺だけ

深いこころの奥までは映してくれない

もしもあの時、海に出ていたら、この碧い空には出会わなかった

ありがとう

磯エビかあさん!

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