磯エビかあさん
川エビは、広い海原に出たいと思っていた
眩しい太陽のもと、思いっきり恋をしたいと
ある日、幼なじみの磯エビに、真顔で聞いた
「一緒に海で暮らさないか?」
「えっ? それってプロポ・・・」
「いやいやソーじゃなくて
青い海はどーかなーって思って」
「 死んだ母さんが言ってたワ
『海はひろいけど深い』って」
「母さん達、昔、海に住んでたんだって
父さんに誘われて河口からどんどんどんどん
上流に遡って来たけど
しょっぱい水からおいしい水になれるのに
そう時間はかからなかった
でも真水に慣れてる私たちが
塩水の中に行くのは死ににいくのと同じだって
言ってたワ 母さん
それに ほら、あそこ!
ひまわりがみえるでしょ
晴れた空にはひまわりがよく似合うワ
碧い空も清んできれい 海の青さにまけない」
いつかそんな話をしたね、磯エビ母さん!
もう腰も曲がったから、思うように向日葵をみあげることもできないけど
いつまでも向日葵はそこに咲いている、川でよかった
眩しいばかりの海は鏡
眩いばかりの太陽を映すのは上辺だけ
深いこころの奥までは映してくれない
もしもあの時、海に出ていたら、この碧い空には出会わなかった
ありがとう
磯エビかあさん!